前回は、数字と単位についてご説明しましたが、
今回は、図面の「縮尺」についてご説明いたします。
「縮尺」は、皆さんもご存知の通り、
建築に限らず、図面というものが、実際の大きさを
何分の一かに縮めて用紙に描く、というコンセプトのもとに
形づくられているものですので、そのときの縮小の比率を
「縮尺」あるいは「スケール」と呼んでいるわけです。
例えば、上の図面では、縮尺が「S=1/100」と表示されています。
これは、実際の大きさ(長さ)を正確に100分の1に縮小して
図面を描いています、という表明です。
例えば、前回お話に出した、
1間=1,820ミリという長さは、この「S=1/100」の図面上では、
18.2ミリの長さで描かれています。
さて、図面を見ていくときに、ここの部分の長さは何ミリなんだろう?
と知りたくなる場合があります。
しかし、実際の図面上では、ありとあらゆる部分に寸法が
記載されているわけではありません。
逆に、そんなことをしたら図面は、寸法だらけになって
何がなんだかわからなくなってしまうでしょう。
そこで、図面を読む人が、自分で寸法を読み取る必要が
出てきます。設計の人や施工の人は、「三角スケール」という
ものさしを持っておりまして、コレで図面の絵から長さを
読み取っていくという作業をしています。
(↑三角スケール:手前下に1/200の表示が見えます。)「三角スケール」は、三角形の断面の各頂点の裏表、計6ヶ所に
目盛りが刻んでありまして、それぞれの目盛りの刻み方が、
いろいろな縮尺に応じた割合になっていますので、
図面の縮尺にあった目盛りのところを使って、読み取っていくわけです。
例えば、この「三角スケール」ですと、
「1/100」「1/200」「1/250」「1/300」「1/500」「1/600」
という6パターンの目盛りがふってあります。
これで上の6つの縮尺の図面は読み取れますし、
目盛りを自分で10倍に換算して読み取れば、
「1/10」「1/20」「1/25」「1/30」「1/50」「1/60」
の図面が読み取れますし、100倍に換算して読み取れば、
「1/2」「1/3」「1/5」
などの詳細図面を測ることも可能になるわけです。
建築図面でしたら、このくらいで、ほぼ全ての縮尺を
網羅していることになります。
普通、建て主さんと設計士が打合せするときの図面は、
1/100の図面が多いですから、1/100でしたら、
普通の文具のモノサシの目盛りがその割合になっていますから、
「三角スケール」でなくても読み取れるということになります。
とはいえ、縮小したものを目盛りで読むのですから、
誤差が入ることが前提です。実際10センチのものが
1/100図面では1ミリになってしまいます。
図面からスケールで読むときは、おおよそと考えましょう。
図面内容と縮尺の関係では、次のような組み合わせに
なることが多いようです。
・基本となる平面図・・・「1/100」
・平面詳細図・・・「1/50」または「1/30」「1/20」
・立面図・・・「1/100」
・断面図・・・「1/100」
・矩計図・・・「1/30」「1/20」
・構造図・・・「1/100」「1/50」
・展開図・・・「1/50」
・設備図・・・「1/50」
その建物の全体の大きさによっても、1枚の用紙に
入るか入らないかの問題もありますので、
「絶対この縮尺」というわけではありませんが、
誰が見てもパッとわかるというのは、この辺では
ないでしょうか。
(正式には、製図のルールもあるのですが、
あまり細かいことには言及しません。)
もし、家をお建てになる方でしたら、
そう高いものでもありませんので、1本お求めに
なられてもいいのではないかと思います。
サイズも携帯できる小さなものから、実寸で30センチ
くらいになる大型のものまでありますが、
小さいものは、1本数百円からホームセンターなどでも
販売しています。
熱心な建て主さんでは、ありとあらゆるところを
自分で測ってみる方もいらっしゃいます。
設計士の立場では、そのたびにご質問のお電話を
いただいたりするものですから、精神的にプレッシャーを感じますが、
実はその過程で、建て主さんもこれから建てようとする建物の
生活シュミレーションに思いをめぐらしたりすることになりますので、
その都度、気づいたことを修正していくと
結果として、最終的には良い建物が出来上がるように思います。
posted by 建築士ky at 10:00|
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